王立タペストリー工場の見学に行った。
1721年、フェリペ5世が、それまでのスペインの質素な宮殿を心地良いものにするために、フランスの王立タペストリー工場を真似て設立した工場。
タペストリーは贅沢な装飾品というだけでなく、冬の防寒や、夏の熱風よけという意味もあったとガイドさんの説明。
ゴヤのタペストリーは有名だけど、ゴヤはここでスケッチや下絵を描いて、それを見ながら職人たちがせっせと作った。
現在でも職人たちが手作業で絨毯、タペストリー、紋章入りの壁掛け布を作ったり修復したりしている。
タペストリーは現代では需要がほとんどなくなったので、工場がどんどん閉鎖し、今でもタペストリーを作っているのは世界でこの工場だけだそうだ(修復のための工房は確かイタリアとフランスの2か所に残っていると言っていた)。
今回見学させてもらったときには、イギリスの美術館からの注文で新しいタペストリーを制作していた。
絨毯ってこうやって作るのだと初めて知った。
下絵を見ながら、丈夫な木綿の縦糸に、カラーの毛糸を絡ませては、短く刈りそろえていく。
微妙な色合いや、影や、カーブなどは熟練した職人じゃない出せない匠の技。
絨毯にはトルコ結びとペルシャ結びがあり、この工房では、トルコ結びで織っているのだとか。
こちらはタペストリー。
職人さんは裏側から作業し、縦糸の反対側に鏡を置いてちょくちょく糸の間から表の出来上がり具合をチェックする。
気が遠くなるような細かい手作業だが、給料は安い、それどころか最近給料の支払いが滞っているとぼやいていた。
この工場は、スペインの文化財を継承していくために財団で運営しているが、経営難なのだそうだ。
財団の理事会に名を連ねている、文化省、マドリード州政府、マドリード市役所がなんとかしてくれるとは思うけど・・・
工場の壁には様々な色の糸や毛糸が天井まで積まれていて、それはそれは圧巻。
現在の建物は19世紀末に建てられた2代目で、ネオムデハル様式の建築。
結婚式やイベントなどもできるそうだ。
いろいろ工夫して、お金の問題を克服して、せめて職人さんたちにお給料払ってあげて!
絶対後世に残してほしい文化財だ。
Real Fabrica de Tapices